プリンセスラインバス

千年以上の歴史を持つ京の町。歴史上さまざまな役割を担ってきた京都は近世以降、日本古来の文化や精神を研究する上で重要な学都として発展していきました。京都女子大学は浄土真宗に基づく教えを基本理念とする真面目な校風で知られる大学です。ただ七条坂の上にある同学の交通アクセスはお世辞にも良いとは言えず、京都駅からですと市営バスの混雑系統に乗車し、さらにそこから坂道を登る必要がありました。
そこに目を付けたのが当時貸切送迎バス会社であったセレモニー観光(株)で、折しも路線バス新規参入の規制緩和が行われたということもあり2005年3月末より京都女子大学を拠点に四条河原町、京都駅八条口を結ぶ路線バス事業を開始しました。開業時に用意された車両は7台で、そのうち阪急バス中古である007号車のみが西工製ボディを持っています。同社の西工車は現在に至るまでこの1台のみではありますが、今となってはかつての阪急バスの仕様を色濃く残す存在として大変貴重な存在であり、また移籍後の仕様変更も他では見られない興味深いものとなっているので、この項で詳しく紹介したく存じます。

05年導入 92年式 B型(58MC) U-MP218M 標準床

該当車:007(京都200か・990)

開業時に導入された阪急バスの中古車両で、阪急バス時代の社内番号は92-2366、初登録は大阪22あ6631でした。拡大サイズで茶色サッシとなっている逆T字窓、戸袋窓に収められた行先表示器といった仕様はまさに阪急そのものです。後扉に明かり採り窓を設置するのは関西の電鉄系事業者によくみられました。空調は全国的にも珍しいヂーゼル機器分散クーラーを搭載しており、独特のルーバーを持ちます。フォグランプは市光角形のようです。

リア/非公式面です。阪急バスではU-規制以降バックランプが丸型二灯となり、P-車と区別ができます。テールはバス協で、補助灯はバンパーに埋め込んでいます。最後部の窓だけが日の字型になっているのは阪急バス独自の仕様です。エンジンルーバーは92年式にも関わらず後期型(強度強化タイプ)で、阪急バス時代からこの形状であったようです。

車内の様子です。こちらもほとんど阪急時代のままではありますが、このころの阪急バスのオリーヴ色ハイバックシートや薄茶色の手すり、角形ベンチレーターなどといった独特な仕様が残っている車両自体が貴重なものです。モニターは移籍後の取り付けですが前方の大きなものを含め営業中に映像がうつされることはありませんでした。ドアブザーは泰平製です。

ここからはちょっと変わったところもご紹介しましょう。後バンパーに貼られているシールは「高速有鉛」。

ホイールキャップはFUSO純正品。お好きな方がいらっしゃるのでしょう。フェンダーリップは黒く塗られているだけでラバーフェンダに交換されているわけではございません。


セレモニー観光は幾度かの社名変更を重ね、元来路線バス事業の愛称であったプリンセスラインバスという名前に落ち着いています。なお車体側の変化はリア部の社名表記の変更のみに留まっています。その後同社は新車・中古車ともに多くの導入を行ったため、007号車は2014年頃から長期にわたり車検切れ状態で休車となっていました。2016年に現役復帰し、現在は冷房機器の不調から季節限定で運用に就くようです。運営実態は謎が多く、今後の処遇などの予測は難しい状況です。

現在も各地事業者より中古車の導入は行っており、今後ほかに西工車が導入される可能性は否定できません。実際、過去に大阪市交通局より西工車を購入したことがあった模様です。しかし整備・運用には残念ながら至っておらず、行方不明となっています。

[車両一覧]

007 92年式 U-MP218M 京都200か・990 所属京都支店 車検30-7




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