横浜市消防局

神奈川県最大の都市、人口370万人を超える横浜市。広域な行政区域の中には様々な地形があり、市内を管轄する消防では多種多様な機材が配備されています。その機材は我々バスマニアから見ても非常に面白いもので、世界で1台だけのバスが2種類存在しています。

そのバスが西工製であることはもはや説明する必要もないことでしょう。


日デ ADG-RA273PAN改+E-III(96MC) 2005年式


こちらは2005年度に導入された車両です。路線シャーシであるRA273PにハイデッカーのE-IIIを架装したパターンで、江ノ電など少数ながら存在するパターンです。ただ、ご覧の通り前後扉でまるで献血車のような様相です。E-IIIの献血車や検診車では後扉が床下格納ステップ付の引戸になっていることが多く、その場合では床の高さに合わせて設置された扉が開くと下からステップが2段出てくる仕組みになっています。しかしこのクルマは前扉より少し高いくらいの位置に狭幅の折戸が設置されています。ハイデッカーなので前扉はステップを2段上がって車内に入ってから更に1段上がるようになっていますが、後扉はステップが3段になっています。近くで見る機会は何度かありましたが、一応緊急車両である故に外観の撮影許可は頂けるものの、車内の撮影はNGなため写真がなくがいまいちわかりにくいかと思いますが要するに後ろの扉だけスリーステップになっているとお考えください。


前後扉という仕様には当然意味があり、隊員の方に伺ったところ"機材や物資を輸送するためのトランクスペースを確保しつつ、人員輸送車としての機能を持たせるため"とのこと。後ろに扉がついている理由はもう1つあり、車内最後列とその前2列非公式側が貨物スペースになっているため、前まで移動せずとも積み下ろしを可能にするためです。ちなみにこのクルマより後に登場した東京消防庁と川崎市消防局のPKG-RA274RBN+C-Iでは同じく最後列のみに貨物スペースがあり、乗降機能を有さない荷物用扉を設けています。

その積載力と人員収容力を活かし、消防音楽隊の移動車として月に数回出動しています。当然のことですが、れっきとした消防車両であるため緊急時に必要な赤色灯がルーフに横長の、バンパー上に小型のものが2ついています。

非公式側です。逆光で汚い写真ですみません。(そのうち差し替えます)

先述の通り後ろ扉正面は貨物スペースになっているため、おそらく車内の座席レイアウトは右後ろにトイレがついている高速路線車に近いカタチになっているはずです。その為非常口が本来の場所に設置できないことから車体中央のやや後方に設けられています。リアガラスが小さいのも貨物スペースの関係だと思われます。おそらく献血車と同じサイズです。



日デ ADG-RA273PAN改+E-III(96MC) 2006年式


続く2006年度でもう1台導入されています。こちらも前年度車と同じく路線シャーシにハイデッカーのE-IIIを架装していますが、今度は中扉が四枚折戸となり前後バンパーが白くなっています。

隊員の方に伺ったところ、こちらは災害時などに休憩室として利用することができる他、担架を7台搬入できるようになっているそうです。中扉が四枚折戸なのはそのため。更に、前年のクルマは座席に補助席がありますがこちらにはなく、担架を載せるために座席がサロン車のように回転できるようになっているとのこと。そのため、貨物スペースはありませんが上欄のクルマより乗車定員が少ないそうです。

バンパーが白いのはクルマを瞬時に識別するためと思われます。 白バンパーが目立つので気づきにくいですが、前後扉車とは帯の色が逆になっていて太い方が青になっています。

扉の形状に違いはあるものの前後扉のE-IIIは一応存在しています。しかし四折となれば話は別で、今のところこれ以外に聞いたことがありません。 後扉とは違い正規の高さに扉が設置されています。扉は標準幅でアルミ無塗装仕上げです。行政のクルマは鍵の使用が徹底されているので当然中扉にも鍵がついていますが、2枚1ユニットである四枚折戸は鍵が2つなければ施錠できませんので当然鍵は2つ付くことになります。これは非常に珍しい例です。この扉が開くと現れるのは標準高のスリーステップであることは言わずもがな。

またまた汚い写真ですみません。非公式側の写真です。

前後扉車とは異なり、非常口の位置を変える必要がないので通常の位置に設置されています。

どちらも2007年以前の登場なのでリアフラッシャーはシビリアンこと市光7452で、クラリオンのバックカメラがついています。


担架が乗せられると聞いて、気になったので実際に救急で出動したことはあるのか尋ねてみたところ、過去に一度だけ集団熱中症の対応で緊急走行を伴う出動があったそうです。

サイレン鳴らしながらE-IIIがすっ飛んでいくところはちょっと見てみたい気もしますが、これが緊急走行することがないような世の中になって欲しいものですね。

前後扉車とは違い機材輸送用としてはあまり役に立たないので、音楽隊の編成が大規模になるときだけ随伴してきます。稼働率は相当低く滅多に走っていません。



余談ですが、屋根上にある横浜消防という文字間隔と、換気扇の数が2台で違っています。理由は不明ですが、こういうのを見つけるのも楽しみの一つです。


(※)以前書いた記事は削除しました。

(※)3枚目 4枚目 5枚目の写真は隊員の方から許可を得て囲いのコーンを一時的に撤去した上で撮影しています。また撮影後にコーンは元の配置に戻しています。

(※)緊急車両を取り上げた記事です。問題があれば削除しますのでコメント等でご連絡ください。

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