中型のタンクカバー

バスには車体のどこかしらに燃料を入れておく容器が必要で、天然ガス(以下:CNG)を燃料とする場合も当然容器が必要となります。ただ、通常の軽油燃料とは違いタンクの形状に自由がなく、充填するには都市ガスなどと同じように円柱型のボンベが必要になります。CNG車が初めて登場した時のバスはツーステップバスが主流であり、床高い分床下のスペースに余裕ができるため床下格納となっていました。しかしやがて低床化によって床の地上高は低くなり、床下スペースの確保が難しくなったことにより屋根の上に搭載されるようになります。 当然ボンベと配管をむき出しで設置する訳にはいかず、保護するためのカバーを被せるわけですが各メーカーや車種で様々な形状があるわけです。

西日本車体工業では大型車中型車ともに数度に渡り形状変更が行われており、今回は中型の3タイプを紹介していこうと思います。


自家用 KC-RM211GSN+日産中型(日デオリジナルスタイル) 1998年式 元川越観光自動車→東武バス


1998年に運行を開始した埼玉県の上尾市コミュニティバス「ぐるっとくん」用として川越観光自動車に導入された1998年式KC-RM211GSN改です。車台番号とリコール情報を照らし合わせるとRM211系のCNG車としては初めてのクルマであることから試作要素が多く含まれていることが推察されます。日デ純正の日デオリジナルスタイルにビルトインクーラーのCNGという特徴的な仕様をしており、更に換気扇なども設置されていないため屋根上はスッキリしています。

ボンベカバー部分を拡大した画像です。
かなりわかりづらい画像ではありますが、ボンベは進行方向に対して垂直に搭載されてているもので、我々が普段目にするCNGバスはボンベカバーの幅が車体幅のギリギリまであるのに対し、このカバーはそれよりも幅の狭いものが取り付けられています。これはボンベ1本の長さが後に登場し一般的になったボンベよりも短いためと考えられます。また、充填口から伸びる配管がカバーの外に飛び出し突起物となっているのも特徴です。
ちなみにこの形状のカバーを取り付けたクルマはおそらく2台のみで、本項で紹介しているクルマとは別に愛知県の自家用が存在していたようですが現在は消息不明です。


画像でなんとなくおわかり頂けるかと思いますが、このクルマはイルミネーションバスとして年に1度数日間だけ姿を現すものでナンバーこそあるものの車検は切れているためレッカーで輸送しているものと思われます。CNGボンベは15年程度しか使用できず、継続して車両を運用したい場合は多額の費用をかけボンベを新しく交換する必要があります。この車両は1998年式で、撮影したのは2016年なのですでに耐用期限は切れており自走できない状態にあるというわけです。


広島電鉄 KK-RM252GAN改+B(96MC) 2003年式 元日本赤十字社大阪支部自家用→呉市交通局


こちらは日本赤十字社が運営する福祉施設から呉市交通局に移籍し、事業廃止によって広島電鉄が引き継いだクルマです。残念ながら2017年3月頃に廃車されたようです。

RM252系では2003年まで日産中型を含む全てのボデーでこのカバー形状を採用していました。中でもB型は稀少で画像のクルマ以外では神戸市交通局 大阪市交通局 富士急行(ワンステ)で納入されたのみと思われます。また富士急行はワンステップで、上欄のクルマと同様にビルトインクーラーを採用していた唯一となります。

ボンベカバー部分を拡大した画像です。

上欄で紹介したRM211からの変更点としてはリア方向への長さが変わったこと、側面から見たときの形状が左右対象でなくなったことが上げられます。4角の台形から変形した5角になりました。また幅も広くなり、充填口からの配管がカバー内に収まりました。

若干形状が違いますが、大型のUA452系も2003年までこのタイプのカバーがついています。


ABC Parking KK-RM252GAN改+B(96MC) 2005年式 元大阪市交通局→栃木県内自家用


こちらは大阪市交通局から栃木県内の自家用を経由してやってきたクルマです。

ボンベカバーの形状は最終的にこの形となり、これ以降大きな変更は行われていません。

変更時期は2003年ですが具体的にいつ頃からなのはまでは不明。 大阪市交通局では上欄の広島電鉄と同じ形状のカバーを載せたタイプも保有していましたがどちらも退役しこのクルマが残るのみとなっています。この頃になると日産中型の採用例が減りB型が主流になりつつあり、この形状のカバーを搭載した日産中型のCNG車は松江市交通局へ納入された分のみとなりました。

同じくボンベカバー部分を拡大した画像です。


上欄のタイプとはカバーの向きが逆になり、全体的に丸みを帯びた形状になっています。気のせいかもしれませんが全高が少し低くなっているような印象です。側面に点検用と思われる蓋が追加されているのも特徴です。

大型のUA452系も同時期にこちらの形状へ改められています。


西工製CNG車では大型を含めると阪急バスの特注仕様で2種類追加されるので、大きく分けて全部で5つの形状があります。 これはボデーを製造するメーカーで最多で西工の奥深さを感じることのできる部分であると思います。

先述の通りCNGはボンベ耐用年数が15年という壁があり、ボンベ載せ換えにも多額の費用が必要になることから廃車されるのがほとんどとマニア的には厳しい状況にあります。

逆に、旧式となった車両を継続使用したりする場合に排気ガス規制の適用から外れるCNGに改造する事業者もあり、独特な形状のカバーが載せられていることもあるのでCNGタンクに注目してみるのも面白いかもしれません。


余談ですが、重たいCNGボンベを屋根上に搭載する上で必要となる屋根の補強やボンベの搭載方法について日産ディーゼル工業と西日本車体工業は特許を取得していたようです。

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